ふるふると、首を横に振る。
家までそんなに掛かんねえけど、いまはちょっと、帰る気力もない。ぐったりソファに横になって、知恵熱?なんて心の中で笑っておく。
「染、どうすんの?
どう考えてもこの様子だめっぽいけど」
「風邪薬、残ってただろ」
「一応ね。
薬飲むなら何か食べないといけないし……椿、ぐったりしてるけどなんか食べれる?」
「ごめん、むり……」
「そう。
……なら、ひとまず寝た方がいいんじゃない?」
冷凍庫に入れられてる氷枕。
それを穂が持ってきてくれて頭を乗せるけど、まだぼんやりする。スマホに手を伸ばして確認した時刻はもうすぐ17時。俺寝すぎだろ。
「車出せる先代に声かけた方がよくね?」
「……そうだな。連絡する」
芹に言われて、電話をかける染。
いくつか候補があるようで電話しているけど、どうやら各々仕事中なのか忙しいのか、電話に出ないらしい。
最終的に嫌そうな顔をしながら、染が連絡した先は。
俺でもぜったい嫌な顔をするであろう、ノア先輩で。あの人『花舞ゆ』の関係者じゃないのにな、と思っていれば。
薄らと、電話の向こうの声が聞こえた。
……よりによって、この人は出んのかよ。
とか文句を言ってるわけにもいかないし、俺が熱を出していることを手短に染が伝えるのを、聞いていれば。
案外あっさりと電話を終えて、「いまから来てくれるらしい」と俺に言った。
「……あの人忙しいんじゃねえの?」



