そう仕向けたのは、まぎれもなく俺で。
……どうせ、はじめから手を伸ばせもしないのに。
『電話に出ないと余計に怪しまれるだろ』
『次に掛かってきたら出るわよ。
染にバレそうになったらうまく誤魔化して』
誤魔化す、ねえ。
そこまで意地を張らなくても、いっそ直接『関わるな』と言ってやった方が楽でいいのに。……まあ俺と同じで、引き下がるヤツはいないだろうけど。
染なんて、ああ見えて意固地なとこあるしな。
はなびがいると知ったら、何が何でも探して連れ戻そうとするのは俺よりもアイツの方だと思う。
「……まじでだるい」
やっぱり雨は嫌いだ。
人の少ないたまり場の中じゃぱらぱらと降り始めた雨音がはっきり聞こえてくる。
「椿さーん。
ちょっとはやめにお昼買いに行きますけど、椿さんの分も買ってきましょうかー?」
「あ、んじゃあ頼んでいい~?
なんでもいいし任せるわ。ありがと」
「はーい」
いつまでも、引きずっているわけにはいかないのだと理解しているけれど。
俺が未だにコバルトブルーの髪でいる理由を、はなびだけが分かってない。
「……、」
すべてのはじまりは、ノア先輩の一言で。
どうしてそんなことを彼が言い始めたのか、その理由を俺らは知らない。
あの人は俺らの中学の先輩だし、もちろん俺ら個人とも面識がある。
なのにどうして俺らと関わらないでほしい、なんて。そんな曖昧なことを言い出したのか。それが今もずっと、俺の中で引っ掛かってる。



