はあっとため息を吐き出して、引きずるように重たい身体を起こす。

リビングに降りてみれば誰もいなくて、どうやら家には俺だけらしい。



父さんはフリーランスで仕事をしてるから家にいることも多いけど、出掛けたり知り合いの経営してる会社に顔出したりしてるからな。

たぶん今日もどっか行ってる。母さんは買い物とか用事とか、そのへん。



『親から何も言われないの?』



「んー……サボっても何も言われねえよ。

ただし、留年はするなって言われてるけど」



まあ普段はそこそこまじめに行ってるし。

単位が危ないのは俺よりもシイの方だ。こいつ稀に「仕事が」って学校来ないからな。単位落として3年に上がれなかったら笑ってやる。



「……あー、やっぱ、行くの明日にするわ」



今から行くの怠いし。

キッチンに入って冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターのペットボトルをキリッと開ける。グラスに注いで飲めば、幾分かすっきりした。




『はあー? 俺寂しいよ椿くん』



「思ってもねえこと言うんじゃねえよ〜」



『思ってるけどー』



「本気で思ってんならそれこそ気持ち悪いよシイ」



そんな軽口のやり取りを済ませ、「明日は絶対行くから」って約束をして電話を終えた。それから身支度を済ませると、家を出る。

それなら学校行けよって感じだけどまあ、サボるのは今日までだから。



「え、椿さん? おかえりなさい。

今日、天皇寺って休みなんですか……?」



「ただいま。俺はただのサボりだよ〜」