胸元にちりっとした痛みが走って、彼がまた痕を残したのが分かる。

その瞬間、脳裏でターコイズブルーが発色した。



「っ、ノア……」



考えたくない。

今ここで余計なことを考えたら、きっと、何かに侵食されてしまう。でも、"何か"って、なに……?



「……はなび」



「っ」



顔を上げたノアが、わたしの目にかかる髪を指で払ってくれる。

冷房がきいているのに、じんわり汗ばむ肌。くちびるが合わさると、跡形もなく自分が溶けてしまうんじゃないかと思った。



……そんなこと、あるわけもないのに。




「好きだよ。……ずっと、はなびのことだけ」



「ノア、」



「はなびは?」



至近距離で、じっと見つめ合う。

大好きな人から好きと言われて、特別扱いされて。こんな風に触れられて幸せで。言葉だけじゃ足りないのだと、彼にギュッと抱きついた。



「ノアのことだけ、大好きよ」



「ん」



満足そうに口角を上げるその姿が愛おしいから。

だから、どうか。……誰も、邪魔をしないで。