「はなび」



「………」



「はなび? どうしたの?」



「え? あ、ごめん。ぼーっとしてた」



耳元で名前を呼ばれて、ハッとする。

わたしの顔を覗き込んだノアがどこか不安そうに「大丈夫?」と窺ってくれるのを見て、途端に笑顔を作ることで誤魔化した。



「大丈夫よ。ありがとう」



せっかくノアがここに帰ってきてくれたのに。

浮かない顔をしているなんて、良くない。




「お出掛け楽しかった?」



わたしがぼんやりしている間にお風呂を済ませたノアが、ヘッドボードに背中を預ける形で隣に座る。

なんだか眠る気分じゃなくて、わたしも同じように座ると、ノアが何も言わずに手を繋いでくれた。



「とっても楽しかった」



「そっかそっか」



こつん、と、彼の肩に頭を預ける。

そのわずかなぬくもりに、すごく安心した。



「ノアは今日、どこ行ってたの?」



部屋の中は静かで、まるで世界にふたりきり。

……本当にこのままずっと、ふたりきりになれたらいいのに。