『花舞ゆ』に上下関係はなくて、みんな仲が良いから。気軽に幹部とされている5人に話し掛けられるその関係性は、かなりいいと思う。

……実際、たまり場は声が基本筒抜けだし。



恋愛の話なんかも普通に交わされてるものね。

メンバーの彼女は、当然のようにみんな知ってたりする。



「ああ、うん。……知らなかったの?」



「知らなかった」



「まあ、わざわざ広めるようなことでもないし。

芹、ぜったい高校入ってモテてるでしょうね」



「好きなヤツと付き合いたいって言ってたよ。

まあ、その好きな子が今はいないみたいだけど」



その考え方が芹らしいな、と小さく笑みが漏れる。

きっと芹に好かれた女の子は、すごく幸せにしてもらえるはず。フッちゃったのもったいなかったかも、なんて。




「……あ、ノア」



そんな意味のないことを考えながら、滑らかにホームに停まった電車をおりる。

そのタイミングで、スマホが着信を知らせた。



「もしもし?」



椿が出ていいよと目線で伝えてくれたから、改札へと歩きながらスマホを耳に当てる。

もうすぐ仕事が始まるこの時間に、電話を掛けてくるなんてめずらしい。



『もしもし、はなび?

遊んでる時にごめんね。雨降ってるけど大丈夫?』



「え、まさかそれで電話くれたの?」



『うん、傘持ってたか心配だったから』