トウカさんが、苦しげに目を細める。

この人はやっぱり美しくて、儚くて。



「……ルームを、はなびちゃんに引き継ぎたいの」



「え、」



「今すぐにとは言わないわ。

でも出来るだけ早く、わたしとルームを切り離したい」



「っ、でもトウカさんが、」



「大丈夫。

うちの両親がしっかりしてるから、わたしが危ない目に遭うことは正直無い。でもね、わたしには残念ながら、『花舞ゆ』全員を守るだけの力はないの」



自分の身は守れても。

ほかの全員の安全まで補償できないと、トウカさんはそう言いたいらしい。




「害が及ばないように、縁を切る。

……正直、娘を身篭った時点で、ルームから離れようかと思ってたから。本当に悔いはないのよ」



「トウカさん……」



「わたし、実は結婚するつもりなの。

今度は、家庭をつくっていかなきゃいけない」



「それは……

好きな相手と結婚するんですか?」



「ううん、お兄ちゃんが連れてきた相手。

……莉望の面倒も見てくれる、優しくていい人よ」



その瞳に、迷いはないように見える。

なんでも持ち合わせているようで、すべてを諦めることしかできないトウカさん。どうしたら、少しでも救ってあげられるんだろう。



「お願い、はなびちゃん。

もうこれ以上、誰かを巻き込みたくないのよ」