そんなやり取りのせいで、映画には集中できないし。
恋愛ものなんだから当たり前だけど、劇中にやたらと甘いシーンが多くて、わたしの中の感情バロメーターはジェットコースター状態。
それがあまりにもあからさまだったのか、椿は途中で「大丈夫?」って聞いてくれたけど。
大丈夫じゃない原因は間違いなく椿だ。
「……、」
ああでも、これがもしノアとのデートだったら。
こんな風に感情を乱されたりはしないだろうから。
「内容。どうだった?」
「……観に来て、よかった」
ちょっと、楽しいかもしれない。
……相手が椿っていうのが、どっちつかずな感じだけど。
でも、すごく居心地がいいと思う。
変に気を遣うこともないし、遣わなさすぎるってこともない。ちょうどいい距離感。『花舞ゆ』のメンバーとはみんな、そんな感じ。気の知れた、仲。
「ランチ予約してあるし、行こうか」
「え、いつ予約したの?」
「ん?映画の入場時間前、ちょっと暇だったじゃん。
はなびが先輩にラブメッセージ送ってる間に予約したけど」
……そういうとこ、絶対慣れてる。
っていうかラブメッセージなんて送ってないし。ただ単にノアからのメッセージに返信してただけだし。
「やっぱ混んでんな。予約しといて正解」
モールの中にある、おしゃれなイタリアンレストラン。
確かに混んでるし並んでる。彼が予約しておいてくれたおかげで、並ぶことなくスムーズに入れたけど。



