ごめんねと謝りながら涙をこぼす穂が綺麗で。

だけど今俺が言葉を返せば、きっと何であれ傷つけてしまうから。いっそ穂が女の子だったらごめんねって涙をぬぐってやれるのに、そういうわけにはいかなくて。



「……ちょっと、話そっか」



穂の頭に、手を乗せる。

撫でるみたいに数回揺らしただけで手を離すと、近くの小さな公園へと誘った。滑り台とベンチがあるだけで他に何もない、小さな公園。



「……先に結論だけ言っていい?」



「、うん」



「……もちろん知ってるだろうけど、俺にははなびがいるし。

はなびのこと好きじゃなかったとしても、穂とどうなる、とかは、絶対ないと思う」



ひどいことを言ってる自覚はある。

だけど中途半端なことをしたら、余計に傷のなおりが遅くなるから。中途半端な返事で、穂のことを傷つけたくない。




「……ごめんな。

世間の目とかそういうのじゃなくて、さ。穂がそうやってまっすぐに俺を好きでいてくれてんなら、ほんとにうれしいよ。性別とか関係なく」



ベンチに腰掛けた俺と、隣に座ることもせずにじっと俺を見つめてる穂。

あふれそうなそれを一生懸命こらえているのか、さっきから瞳はずっとキラキラと薄い涙の膜を張ったままだ。



「……いつから穂に、苦しい思いさせてた?」



「つーちゃ、」



「いつから……

俺のせいで、穂にそんな顔させてた?」



ふるふると、首を横に振る。

「つーちゃんは悪くないよ」って言ってくれるけど、それでも俺が少なからず穂を傷つけたのはいうまでもない。



だから、泣いたんだろ?

溜め込んできた気持ちをさらけ出す、その瞬間に。