「だって、つーちゃん朝弱いから……」



「……たしかに朝弱ぇけど、連絡くれたら行ってやるって。

はなびと一緒なら難しいけどな」



せっかくなんだから広々と使えばいいのに、ソファの上で膝を抱えて小さくなっている穂。

いつも綺麗な内巻きの髪がめずらしく跳ねていて、寝癖?と聞けば「うーん」と煮え切らない返事。



「……何かあった?」



「……べつにないよー。

それよりつーちゃん、はなちゃんと付き合ってからかっこよくなったよね。あ、元からかっこよかったけど、魅力が増したっていうか、」



何かあったって、バレバレなのに。

それでも誤魔化そうとする穂。言いたくないならいいけど、それならもっと上手く隠すはずで。



「そ?さんきゅ」とそれを軽く流した後。




「コンビニに昼飯買いに行かねえ?

お昼時になったら、色々売り切れるだろうし」



わかりやすく外に連れ出す口実を提示すれば、穂は黙ったままこくんとうなずいた。

……さっきまでは、いつも通りに見えたのに。



穂はそうやって、まわりに合わせて自分の感情を隠そうとするから。

無理してばかりで、そういうところが心配になる。



「……何も言わずに聞いててほしいのか、

俺から色々聞くのか、どっちがいーの、穂」



「……、つーちゃん」



コンビニまではそう遠くない。

たまり場を出てからもずっと黙って後ろをついてくる穂に声をかければ、名前を呼ばれて振り返る。誰もいない道で立ち止まれば、穂が伏し目がちだったまぶたを持ち上げた。



穂の空気は、ときどき独特だ。

誰とも混ざらなくて、浮いてるのとも、違って。