万人を虜にしそうな甘い笑みで囁いてくるのはやめてほしい。
そんなものに靡くほどわたしは軽くないし、こんなのは気にしちゃ負けだから、しれっと躱すけど。
「……っていうか天皇寺って校則そんなにゆるかったっけ?
その髪色引っかからないの?」
「『地毛です』って言い張ってるけど、まあ嘘だってバレてるわな。
中学の時からこれだし、なおす気なさすぎて教師にあきらめられてるよ」
澄んだ瞳が、わたしを見据える。
当然ながら彼の瞳のコバルトブルーも普段はカラコン仕様だ。今日はめずらしく、違うみたいだけど。
「……カラコンしてこなかったのね」
「コンタクト入れてたら、目疲れるし。
……はなび、こっちの方が好きだろ?」
今日の椿の瞳は、綺麗なブラウンで。
それが彼の元の瞳の色なんだけど、彼の言う通り、わたしはこっちの自然の色の方が好きだ。
「……普段からそのままでいればいいのに」
別に視力悪くないんだし。
ああでも、裸眼だとちょっとだけ視力悪いんだっけ。生活できないほどじゃないって言ってたけど。
「普段から俺がこのままにしてていいの?」
「……え、なにがだめなの?」
「俺、家とか……まあ『花舞ゆ』のメンツの前では、裸眼のときもあるけど。
少なくともはなび以外の女の子には、いつもカラコンした状態で接してるよ」
「……それが?」
「……、嫌じゃねえの?
せっかく、俺が"特別"扱いしてんのに」



