「合コンもしょっちゅう参加してるんでしょ?」
「合コン……?
あ、あれは違うから。あの日はほかの行く予定だったヤツがどうしても行けなくなったから、代わりにヘルプ頼まれて行っただけ」
「……椿が"偶然"参加した合コンに"偶然"桃が参加して、"偶然"わたしの名前が出るなんてわたし相当の悪運の持ち主だと思わない?
"偶然"椿とデートまでしてるし」
「……俺のことそんなに嫌いか」
「いいえ? 椿のことは好きよ」
ただ『花舞ゆ』にいるから関わりたくないだけ、と。
電車内でほかのお客さんの迷惑にならないよう小声で告げながら、窓の外の景色に向けていた視線を椿に向ける。……ん?
「……椿顔赤くない?」
暑い?と尋ねてみたら、彼はふるふると首を横に振る。
それから「なんなのお前」って言うから意味がわからなくて首をかしげるけど、結局「なんでもない」で済まされてしまった。……変なの。
「……っていうかさ。
『花舞ゆ』にいるから関わりたくない、って。俺がもし、『花舞ゆ』から出れば、関わるようになってくれるってこと?」
「完全に染たちと連絡取らないって、
縁切ってくれるなら考えてもいいけど」
椿は無茶なことをよく言うけど、わたしも相当無茶なこと言ってるって自覚はある。
だけどノアを選んだ以上、何度言われたとしても半端なことはしたくないから。素っ気なく突き放して、もう一度薄く口を開く。
「でも、椿には無理でしょ。
椿は絶対、自分で『花舞ゆ』を捨てられない」
それをわかってるから、わざとこう言った。
椿は絶対に、あの場所を自分から手放そうなんて思わないし、たとえ思ったとしても出来ない。
だってわたしと椿は、違うから。



