こてん、と首をかしげる穂。

どうやら雑魚寝しているのがあとふたりだけだと気づいたらしい。



「椿なら起きてシャワー浴びて、朝ごはん食べて帰ったわよ。

家族旅行で9時には家を出るって言ってたから、7時には起こした」



だから今頃、家族で旅行先に向けて出発していることだろう。

荷物は着替え詰めればなんとかなるって言ってたし。起きてからうだうだするのが好きな椿も、今日は彼にしては早く行動していた。



「え、帰っ……!?

ねえねえたまちゃん、聞いて、たまちゃん起きてー!」



「ん……なに、穂……うるさい」



「つーちゃんぼくたちより早起きして帰ったって……!」



「……、」




あ、機嫌悪そう。

ゆらっと身体を起こしたけれど不機嫌オーラを纏っている珠紀は、「帰った?」と聞いた言葉を反芻する。一応返事はするらしい。



「家族旅行だから、起こしたのよ」



「酒癖と女癖と寝起きの悪い椿がすんなり?」



「お前それあいつの前で言ったら椿泣くぞ……」



珠紀を起こす穂の声が大きかったからか、芹も怠そうにしながら身体を起こす。

酒癖と女癖と寝起きが悪いって、何も知らない人が聞いたらどう考えても最悪でしかない。



「とりあえず3人とも顔洗ってきたら?

そんな大したものじゃないけど、朝ごはんぐらい用意するわよ」



言えば3人とも、案外すんなり動いてくれる。

それを見て「今日はいつもより寝起きいいな」と、染がつぶやいていた。普段苦労しているらしい。