「俺の腕に、頭乗せていいから」



「……腕痺れちゃうわよ」



「いいよ。乗せてたほうが楽だろ」



髪を撫でて、抱き寄せて目を閉じる。

朝は強いけど、はなびはどうも寝付きが悪いらしい。この間泊まりに来た時も夜中に目覚ましてたもんな。



「……落ち着く」



「俺途中で酔ったから、風呂入ってねえけど」



早く起きれたら、帰る前にはなびに風呂借りよう。

顔を寄せてくるはなびの髪からはいつも通り甘い香りがして、どうやら彼女だけは途中で風呂に入ったらしい。




「……起きたら、家族旅行行くんでしょう?」



「そー……っていうか俺連絡入れんの忘れて、」



「酔って帰れそうにないから、

明日の朝までうちにいますって連絡した」



「……ごめん。ありがと」



頼りない俺と違って、ずいぶん頼りになる。

「さすが未来の俺のお嫁さん」って変なテンションで口にすれば、はなびはくすっと笑って。



「みんな同じこと言うんだから」



その表情が、いつもと何も変わらなかったから。

そこにあった綻びに。──気づけなかった。