「そう、なんだけど……その、ごめんね、椿」
「……うん」
「……ゆるしてくれる?」
上目遣いと、いつもより舌足らずでちょっと甘い声。
わざとやってるってことはわかる。わかるのに、このまま「うん」と言いたくなってしまうのは何なのか。許してやりたくなる。
「つばき……だめ?」
「もういいよ許す……」
「……お前ちょろすぎじゃねーか。
つーか何だよ隣でイチャイチャしやがって。あーも、面倒だからお前らとっとと注文しろよ」
呆れた芹の声に返事したのはミルの隣に座ったマヤで、何もしなくても注文されていく料理。
もうすでにこのテンションに付き合うのがつらい。ここまで来ればもう、あとはなるようになれ、と。
「染、今日アルコールどうする?」
「……、この人数だしな。
お前らの酔い方は把握してるが悪酔いすると介抱できねえから、今日はやめとけ」
「ん、じゃあ今日はアルコール抜きで」
ここの店をやってるのが『花舞ゆ』の先代だから、そのよしみで、5人で来るときは他の客にバレないようにアルコールを出してもらえるけど。
さすがに今日はナシ、と、料理と話で盛り上がっていたところまでは良かった。──問題は。
「……やっぱ飲みたくね?」
「たまり場もどって飲むー?」



