──数十分後。
俺らの行きつけである創作料理屋の個室の中はなぜか、とてつもなく人口密度が高いことになっていた。
「どういうわけか説明して」
「だから、椿が芹に連絡したでしょ?
そのタイミングで俺ら飯行こうって話してて、じゃあ椿も一緒で良いじゃん、ってなってたまり場出る時に、シイとミルが来たんだよ」
「ぼくたち今からご飯行くんだよーって、
そのままシイくんとミルちゃんのことも誘ったの」
「……なんかごめんな、杏子ちゃん」
こういう展開になるはずじゃなかったんだ。
俺は芹と彼女の仲を取り持ってあげられたら、と思って誘ったつもりだったのに。なんでこうなってんだよ、マジで。
いつもならひとつでいける個室も、間の薄い仕切りを取っ払ってもらって2つ使わせてもらってるし。
杏子ちゃんは「大丈夫です」と口にするけど無表情。……顔に表情出ないんだっけ。
「つーか、
なんでそもそも椿と一緒にいんの?」
芹が、彼女に問いかければ。
彼女は「バイト帰りにばったり会って」と口にする。どうやらバイトの後にあのファストフード店で軽食を済ませてから家に帰る予定だったらしい。
彼女の真正面に芹、その隣に俺、シイ、ミル。
杏子ちゃんの隣に穂、珠紀、染。
マジで人口密度高いし、何これ。
別にみんなで飯行くのは良いけどさ、と。
そう思っていたタイミングで「お待たせ」の声。
ばっと顔を上げれば、誰が連絡したのか到着したのははなびで。そそくさと中に入ってくると、「わたしここね」と杏子ちゃんと穂の間を指差す。
「急に呼んで、ごめんね」
申し訳なさそうにそう眉尻を下げたのは、杏子ちゃんで。
どうやらはなびを呼んだのは彼女らしい。……うん、男ばっかだったし、呼んで正解かもしんねえな。



