腕で胸元を庇うようにしながら放たれた言葉に、お互い数秒間無言で見つめあった。

……いまつけてないって言った?



「な、っ……は!?

え、ちょ、付けてねえの!?」



「……え、そんなに驚く?

寝るとき胸元苦しいから、」



「や、うん、それはわかるけど……!」



俺と一緒のベッドで寝てたのにそんな無防備なことする!?

俺昨日はなびがお風呂入ったあと、何回か抱きしめたんですけど。っていう、か。起きた時、はなびさん俺に抱きつく形で若干乗りかかって寝てたんですけど。



「……そんなに慌てることじゃないと思うわよ」



だめだ。なんにも男のこと分かってない。

確かに何もしないとは言ったけど、そこまで無防備にいられたら困る。心臓が痛い。




「っていうか、そういう話じゃなくて。

つけてないから目瞑るか後ろ向くかしてて、」



「あー、うん……後ろ向いてる……」



揶揄うつもりだったのに、なんだこの負けた気分は。

枕に顔をうずめていれば聞こえてくる微かな衣擦れの音に、心拍数が上がる。



「お待たせ。もう終わったからいいわよ」



「ん……先行ってて……」



「……二度寝しないでね」



彼女からの忠告に「んー」と生返事を返して、ひとりになった部屋で深いため息をつく。

……こんな赤い顔、はなびに見せられるわけねえじゃん。