「……そんな慌てられると、

なんか、逆に俺がショックなんだけど」



「思ってもないこと言わない……っ。

ほらっ、椿もはやく起きて」



せかせかと指示されて、仕方なく身体を起こす。

ふあっと呑気にまだ欠伸している俺と、俺とのイチャラブを見られたことがよっぽど恥ずかしかったのかまだ慌てているはなびと、そんな俺らを見てくすくす笑ってる父さん。温度差がひどい。



「ごめんね、楽しんでたのに」



先行ってるよと告げた父さんがこの場を離れると、必然的にふたりきりで。

自分の荷物の入ったバッグからがさごそと服を取り出していたはなびが、ふと動きを止める。



「……あの、椿」



困ったような表情で。

まだベッドの上にいる俺をじっと見つめたはなびは、ちらっと逃げるように視線を動かす。




「先顔洗ってきてくれる……?

や、うん……別にいいんだけど後ろ向いてほしいっていうか、せめて目瞑っててほしいっていうか、」




……ああ、俺が見てたら着替えられない、と。

一度でもそういう展開になっているならまだしも、そうじゃないし。ふっと息をついて、それでも少し揶揄いたくなって、笑みを漏らす。



「着替えるぐらい大丈夫だろ」



「……どこから来るのその根拠」



「だってちゃんと下着つけてんだろ?

それなら背中向けたまま着替えれば別に、」



「……、」



はなびの視線が、ちろ、と動く。

あ、怒った?と一瞬思ったけれど、どうやらそうではないらしく。



「……つけてないから、言ってるの」