気が早いかもしれないけど、準備しておくに越したことはない。

それに、単純なのはわかってるけど、はなびとの将来を考えれば、ただただ楽しい。



いまならなんでも、頑張れる気がするから。



「……椿は無気力なくせに、

やれば簡単に出来ちゃうから大丈夫よ」



「……褒めてんの?」



「才能があるって褒めてるの」



「……ならがんばる」



好きになるのって、本当にすげえと思う。

だってはなびを好きって感情一つだけで、俺はここまで自分のことを決められてんだから。




「そういえば、はなびは、」



「ごめん、椿……

いつもこんな時間に寝ないんだけど、心地いいからわたしもう眠くなってきちゃった」



「ん……いいよ寝よう」



はなびを抱きしめると、彼女は目を閉じる。

すみれの相手をして疲れ切っていたのか、背中をとんとんと優しく叩いているうちに、はなびは腕の中で眠ってしまった。



「……おやすみ」



眠ったはなびのくちびるにキスを落として、目を閉じる。

本当はこの瞬間。……気づいていたのに、俺はあえて彼女の嘘に気づかないふりをした。



だって今まで、たったの一度も。

はなびは自分の都合で人の話を遮ったことなんて、なかったから。