まあノアと付き合った時もそう思ってたんだけど、と。
ちょっとだけ視線を逸らしたはなびのそれは照れ隠しだ。
「わたしのこと……何度も、惚れ直させて」
「……はなび」
「そう簡単に、わたしが靡かないように。
どうしようもないぐらい好きでいて。……そしたらわたしも、安心して好きでいられるから」
俺の勝手な憶測だけど、はなびは無意識のうちにトラウマになってるのかもしれない。
先輩と付き合ったと同時に、未来を諦めていたから。いつかだめになるんじゃないかって、そんな不安が奥底にあるような気がする。
「……ん、約束する」
小指を絡めて、指切り。
そんな子どもじみた約束でもはなびは嬉しそうに笑ってくれる。些細な約束でも一緒にいられる未来に、喜んでくれる。
「……はなび、
この間俺に教師向いてそうって言ってたじゃん」
だからそれに応えたいと思う。
俺の一生をかけて、彼女をお姫様にするために。
「あ、うん。女子高の、」
「その誤解もう解けただろ。
……じゃなくて。あの後、色々考えたんだけど」
進路、と。
伝えればはなびは「うん」と頷いて俺の話を聞いてくれる。彼女が言ってくれた通り、教師の道も一応考えたけど、やっぱりしっくりこなくて。
「なりたいもの、やっと見つけたんだよ」
俺がなりたいもの。
はなびをお姫様にする前に、俺が自分でなりたいもの。幸せにしてやる前に、その準備のひとつである仕事として必要なもの。



