何気なく出てきた彼女の名前に、一瞬肩が跳ねる。
先輩への嫉妬で彼女を相手にして帰ってくるのは俺だけど、いつも、その後はなびと目を合わせるのが嫌だった。勝手に罪悪感を感じるから。
「……本当にうるさかったんじゃないですか?」
「え、はなびは椿の味方なの?」
「えへへ」
「えへへじゃねえよ!
でも、くっそ、かわいいな……っ!」
「……ちょろい」
はなびのブラックな一言にも気づかずに、「はなびは可愛い」と悶える先輩。俺らのトップ。
この隙に奥に行こうと足を出しかけたところで、「おかえりなさい」とはなびの優しい声。
「……、ただいま」
「今日ね、みんなでお菓子買いに行ったの。
椿の分残ってるから、」
純粋な目が向けられるたびに、勝手に感じる罪悪感と。俺が「遊んでた」と先輩に言われても、気にしないはなびへの勝手な苛立ち。
全部が重なって、八つ当たりしそうになるのに。
「はい、これ。椿、好きでしょ?」
「……すきだよ」
変わらない優しさが嬉しい。
当たり前のように俺の好みを知ってくれている彼女が愛しい。手を引かれた際に一瞬だけ触れたぬくもりが、恋しいくらいに。
ああもう。──今日も好き、だ。



