「……なんで父さんも母さんもそんな笑ってんの」
「うちの子はかわいいなあと思って」
「ふふっ、はなびちゃんが泊まってくれるって聞いて椿も楽しみにしてたんでしょ?
でもすみれに取られてるし、すみれのことも好きだから文句言えない椿が可愛いのよ」
「……じゃあすみれのことなんとかして」
このままじゃ俺の立場がない。
すみれに、はなびはお兄ちゃんの彼女、とは教えてないからわかってないのかもしれないけど。前にすみれの方が大事って言ったことあるしな。
「なんとかできないってわかってるから、
椿もすみれに文句言わないんでしょ?」
図星をさされて、ケーキを冷蔵庫に戻しながら再びため息が漏れる。
確かにその通りで。俺がダメと言うことですみれを泣かせると面倒だから、言えないでいる。……我ながら妹にめちゃくちゃ甘い。
「なんとか出来そうならそうしてあげるよ」と。
まるで信頼できない言葉に曖昧な返事をして外に出る。
言った通り花火のパックを開封しているふたり。
その間に用意しておいたバケツに水を入れて、花火をすべて開けたのを見てからろうそくに火をつける。
「……椿、一緒にやらないの?」
「俺はいいよ〜。
煙いの苦手だし、すみれから目ぇ離せねぇし」
「……じゃあ最後に線香花火だけでも一緒にやろうね」
考えた末に。はなびがそう言ってくれて、「ん」と返事する。
目を離せないとは言ったものの、すみれははしゃいでいる割に大人しいし。月が綺麗だな、と逸れたことを考えながら、ぼんやりふたりを見守る。
楽しげなふたりを写真に収めることだけは忘れねえけど。