夕方になればスイーツでも食べに行く?と問われたけど、なんというか普通のデートプランだった。
……いや、もちろんいい意味で。
椿は突拍子もないことを言ってきたりするから、てっきり変わったプランを提示してくるかも、と少々不安だった。
もし変わったプランだったら、そのときは絶対行かないって言い張ってただろうけど。
「……服は、これでいいかな」
「いいんじゃない? 大人っぽくて」
ひとりでつぶやいたはずなのに返事がかえってきて、一瞬肩が跳ねる。
でもまあここは寝室だから、今はひとりじゃない。鏡に向かって合わせていたそれを振り返って見せれば、ノアはもう一度「いいと思うよ」って言ってくれた。
ノアがいいと思ってくれたコーディネートで、別の男とデートなんて。
椿と、ってやましい気持ちはまったくないのに、なんだかすごく申し訳なくなってくる。
ノアと一緒に過ごしたいから、日を変えてもらえばよかった。
……なんて、いまさら遅いんだけど。
七分袖のオフショルダーは、白地に紺と黒のストライプ。
それに黒のダメージスキニーをあわせてカジュアルに。デートなんて普段はしないけどノアがよく家に来るから、これでも服に気は遣ってる。
でも相手は椿だから、ちょっと手抜きだ。
あの色男の隣にいなきゃいけないんだから、最低ボーダーがすでに高いし、結局それなりのおしゃれになっちゃうけど。
アクセサリーどれがいいと思う?って尋ねると、わたしのうしろから覗き込むノア。
真剣に選んでくれてるんだと思って答えを待ったのに。
「ん……!?」
わたしの髪を手で纏めた彼が、髪を持ち上げてうなじにキスを落とす。
そこに焼けるような痛みが一瞬走って、何をされたのかはすぐにわかった。
「髪纏めて、友だちに見せつけてもいいよ。
……あと、アクセサリーはこれでいいんじゃない?」
わたしが聞いたのはアクセサリーなのに、ついでのように告げる彼からオレンジ色の天然石が埋め込まれたネックレスを受け取る。
また何かされたら困るから、頼まずに自分でつけた。



