こくんと頷いてみたら、椿は「冗談だよ」って笑う。

え、何が冗談? 何がどこまで冗談なの?



「今日はここまでにしとく」



「!?」



「続きしたかったのにごめんな?

色々都合悪いし、また今度。それにまだ両想いってなってから日も浅いし、4年待ったのに比べたら全然まだ待てるよ」



「……本当にあれだけ遊んでた椿?」



「一途って言ってくんねえかな」



いや、取っ替え引っ替えしてたじゃないの。

それなのに「待てる」とか言われたら、疑ってしまう。その気持ちじゃなくて、いま話してる相手が本当に椿なのかってことを疑いそうになる。




「とりあえず、まだ手出す気ないから安心しろよ。

でも我慢はしてるから、はだけた胸元は直してくんねえかな」



「……、わかった」



「ん、なら帰るわ。ちゃんと戸締りしろよ?」



ゆるんだ胸元を軽くなおして、椿を玄関まで見送る。

一度は思考を溶かしてしまうくらいまで甘やかしたくせに、「またな」と軽めのキスを落としただけで、あっさり帰ってしまった。



「……ずるい」



全部駆け引きなんだとしたら、本当にずるいと思う。

胸元に落とされたキスの感触が、まだわたしの肌に残っていて。



このまま恥ずかしい思考に陥るのを阻止しようと、ひとまずお風呂に向かった。