「そ、ういうわけじゃ……」



ふるふる首を横に振って否定するけど、どうにも見抜かれていそうで困る。

ガレージを出る前に一度解かれた髪は再び彼がひとつに結びなおしてくれたのだけれど、「髪が乱れるようなことしたの?」と周囲をざわつかせた珠紀とはしばらく口を利かないようにしようと思う。



「期待してたなら、続きしても良かったんだけど」



「え、」



「はなびがそうじゃないなら、仕方ないな」



また今度にしようかと告げる椿。

ど、どうしよう。期待した、わけでは、ないんだけど。そうなってもいいように念入りに準備してたせいで、今日待ち合わせ時間に準備が間に合わなかった、っていうか。



いや、でも、恥ずかしい……し。




「あ、の……椿」



「ん?」



顔が熱い。すごく恥ずかしくて困る。

だけど恥ずかしいのに、あのまま流されてもよかった。……むしろ、続けて欲しかった。



「好きにして、いい……よ?」



だめだ、なにこれ恥ずかしすぎる……!

言っちゃったからもう手遅れだけど、いまどきこんな風に言う人いる!?ノアにもこんな恥ずかしいセリフ言ったことないけど!?



「ふは。……いいの? 俺の好きにして」



楽しげにくすっと笑った椿が、裏腹にどこか真剣で甘い視線をわたしと絡ませる。

髪色が大人っぽくなったせいで余計に際立つ色気とか、そういうものがぜんぶ、魅力的で。