「もういい。母さんには話さない」



ふっと顔を背けた先で、父さんと目が合って。

何を言うのかと思えばくすくす笑ってから、「椿はそういうところオープンだよね」と一言。



「男子中高生って、大体自分の恋愛事情を母親には話したくないと思うんだけど」



「んー……あんま気にしたことねえかも。

っていうか母さんが鋭いから、隠しても意味ない」



「ああ、それはあるよね。

この間大雨の中泣きながら帰ってきたって、」



「泣いてねえんだけど……?」



……両親も仲良いな。

知らないうちに俺の情報が共有されてる。さっきの襲おうとしてた云々も、俺がはなびにキスしてたあの日のことだろうけど。




「あら? 泣いてなかった?」



「泣いてない。落ち込んでただけ」



「そう。

……でも、両想いになったからってあんまりはなびちゃんに無理させちゃだめよ?」



「だからなんで俺が手出すの前提なの?」



「あら、出さないの?」



「出さな……ん、んー……?

いや……うん、そういう時が来れば……?」



……なんで俺は母親とこんな話してんだろう。

父さんは父さんで、「ほんとにオープンだね」って笑ってるし。まったく笑い事じゃないけど。