「……椿、どうしたの。

さっきからずーっとニヤニヤしてて気持ち悪い」



「……母さんひどい」



「いや、だって。

頬の筋肉がまったく仕事してないわよ」



「うん、仕事させてない」



……あほな会話だな。

おめでたい頭だわ、と自分で冷静にツッコみながら、「俺さぁ」と若干引き気味の母さんに頬のゆるみが収まらないまま口を開く。



「彼女いるんだけど、」



「そうね。それは知ってるわよ。

何ならこの間椿が襲おうとしてたって聞いたけど」




……襲おうとはしてねえよ。

でもまあ毎回パートから母さんが帰ってきてから昼間一緒に過ごすはなびを送りに行くから、当然母さんははなびのことを知っていて。



今日に関してはすみれの面倒を見てもらうことも、前回直接はなびにお願いしてたし。

彼女、と言ったことはないけど、普通に彼女だと思ってたんだろう。



「……ずーっと俺の片想いだったんだけど、

今日やっと両想いになったんだよねえ」



「……すみれの教育に悪いことしないでよ?」



「ちょっと待ってなんで俺が手出したの前提?

キスしたけどすみれ寝てたし、起きてからは何もしてませんけど?」



「……あら健全なお付き合いね」



俺が言えたことじゃねえけどさ。

……自分の息子のことなんだと思ってんの?