「どしたのはなび、浮かない顔して」



「え?あ、ううん。なんでもないの」



あっという間にシャワーを浴びて、濡れた髪をタオルで拭いながら部屋に入ってくるノア。

決してやましい気持ちなんて無いはずなのに、さりげなく彼からスマホを隠した。



「……そう? ならいいけど」



ベッドに腰掛け、先に寝転ぶわたしを見下ろすノア。

それだけでなんだか気恥ずかしくなって目元を手で覆ったら、彼が近づくのを気配だけで感じた。それから、ゆるい力で手を引き剥がされて。



「、」



くちびるを、奪われる。

自分と同じシャンプーの香りに安心して、さっきの匂いには無意識に嫌悪感を抱いていたことに気づいた。




「っ、待っ……」



角度を変えて濃密になるくちづけに、流されそうになって。

ぽたりとノアの髪から滴った雫が腕に触れて、咄嗟に制止の声を上げるけれど。



「やだ」



「っ、」



ノアらしくない子どもっぽい言葉で、それを遮られる。

わたしが動揺したのを良いことに、ノアはさらにくちづけを深めた。もう何度もしているのに、一向に経験値が貯まらないのはどうしてなのか。



背中がぞくぞくと震える。

ノアの背中に腕を伸ばしてしまえばもう、わたしの負けで。



「……すきだよ、はなび」