「……うん」
『椿、だから……
好きになりたいって、そうおもって、』
電話の向こうの声が、頼りなさげに小さくなっていく。
はなびと付き合った日。あの日いろんなことを俺は教えてもらったけど、こんな風にはなびが自分の気持ちを言ってくれるのははじめてかもしれない。
『っ、嫌だと思うけど、正直に話すから……
確かにわたしは昔マヤが好きで、それを見かねた親同士が許嫁にして、わたしが「おひめさまになりたい」って言い出したのは、マヤが"王子"だったからで、っ、』
落ち着いてゆっくり話したって怒んないのに。
俺に一生懸命伝えようとしてくれるはなび。
泣いたままの声を隠そうともせずに。
きっと画面越しの彼女は、あの人と付き合っている時には見せられなかった涙で、表情をぐちゃぐちゃにしてる。
愛しい以外に、どう思えって言うんだよ。
『そのあと離れることになって、ノアとのことは、椿もよく知ってるだろうけど……!
いまは……椿が、いい、の……』
「……さっき俺、
かなり重くて面倒だったなって思ってるんだけど」
『はっきり「好き」って言い切れるわけじゃないから、どうしたら伝わるかわかんないけど……
椿に、抱きしめられるのもキスされるのも嫌じゃない』
「……うん」
『嬉しい、の』
不器用なのは、どっちだ。
さっきまでの情緒不安定はどこへやら、すっかり口元には笑みが浮かぶ。
「はなび」と呼んだ声はひどく甘くて、俺はこうじゃねえとだめだろと、自分で自分に苦笑した。



