染の言葉を遮って自ら口を開く男。
その続きを知りたいくせに、聞きたくなくて。
はなびと目を合わせることもできずに、言葉を待つ。
合わせるも何も、抱きついている状態のままで、彼女は顔を上げずにいるけれど。
「幼なじみだよ。もちろん、染とも」
「……幼なじみ?」
「こいつは昔から身体が弱かったからな。
ここには連れてこなかったし、小学生の低学年の頃には引っ越したから、お前らは知らねえけど」
一応俺らの幼なじみだよ、と告げる染。
だからはなびが会いたかったって、言ってたのか。しかも10年近く会ってなかったって言ってたし、それならまあ、わからなくもないな。
思い込むのは俺の悪い癖だ。
一度落ち着こうと軽く呼吸を整え直していたら、「みやとはどういう知り合い?」と珠紀が問いかけた。
「いとこ。
……そっちこそ、みやと随分親しそうだけど。前に顔合わせしたよね、『花舞ゆ』の副だ」
「そうだよ。紫呉珠紀ですどうぞよろしく。
みやとは3ヶ月ぐらい付き合ってるけど」
「ああ……、
みやの両親に付き合うの反対されてる彼氏ね」
「、」
「まあ別に俺はどうでもいいけど。
……はなび。せっかくだからゆっくりふたりで話したいし、ちょっと外行かない?」
「……! 行く!」
パッと顔を上げたはなびが、これ以上ないくらいに嬉しそうな顔をする。
俺の前ではそんな風に、笑ってくれないのに。……なんで、って、そんなことばっかり考えて。



