「はじめましてっ、長谷(はせ) みやです。

わがまま言って押しかけちゃってすみません」



翌日の『花舞ゆ』たまり場には、めずらしく女の子がふたりも揃っていた。

ひとりは当然はなびで、もうひとりは珠紀こと魔王様、じゃなかった、魔王様こと珠紀の彼女である女の子。



「……普通にかわいいじゃん」



写真は見たことあるから、知ってたけど。

珠紀の彼女だから何か変わってるのかと思いきや、普通のかわいい女の子だった。案の定、左手にはピンクゴールドの細いリング。



「かわいい……っ」



本名の「みや」をもじって、穂は「みゃーちゃん」って呼んでるらしいけど。

その愛らしさが確かに猫っぽいし、可愛さにすっかり魅了されたはなびが、遠慮なく抱きしめてる。



なんだこの目の保養になる光景……、じゃねえよ。しっかりしろよ俺。

いやでもかわいい女の子に抱きついてるはなびかわい……じゃねえんだよ良い加減にしろ俺の脳内。




「……そういえばはなびは可愛いもの好きだったな」



「顔に似合わずね」



「誰いま顔に似合わないって言ったの」



キッと、発信源である珠紀を睨んだはなびは。

彼女の亜麻色の髪を撫でて、「珠紀にはもったいない」と一言。



うっわ……魔王様を面と向かって煽ってるし……

こうやって珠紀のことを煽れんのは、はなびか染だけだ。それを知ってるから、ガレージ内の温度が一気に下がったじゃねえか。



「はなびこそ、男見る目ほんとないよね」



「……なにそれ嫌味?」