「ん、うまそー。俺の分もつくってくれたの?」
「起きてるんだから、さすがにじぶんの分だけ作ったりしないわよ。
……スクランブルエッグかプレーンオムレツ、どっちがいい?」
「んー、オムレツかな」
プレート上に、クロワッサンにサラダ、フルーツを乗せてあとは卵料理だけ、というところで。上半身裸に、タオルで紙を拭きながら出てきた彼。
キッチンに入ってきたかと思うと、コーヒーメーカーにマグカップをセットしてスイッチを入れてくれた。
先にご飯を作ってしまおうと思って、あとまわしになっていた分だ。
それをわかってやってくれたんだろうとお礼を言えば、彼のくちびるが、ほんの一瞬わたしのくちびるをかすめた。
「……、火つかうから、あぶない」
まだつけてなかったけど。
なんだかさらっと奪われたのが癪で不貞腐れると、「じゃあおとなしくしてようかな」と躱される。
……こういうところが、ずるい。
そうやって軽く流されたら、嫌でもそこに年の差があることを実感してしまうから。
「あぶないときじゃなかったら、別にいいけど」
対抗するようにそう言って、ノアの肩に手を置く。
背伸びするように距離を縮めたら自然に腰に腕をまわされて、部屋が沈黙を生んだ。
一度じゃ物足りなくて、不服で。
何も言わないまま続きを求めて、もっと、濃密に。
「……かわい」
「なに、が」
「ん? なにって、はなびが」