ゆらゆら、ゆらゆら。

振動で目を覚ました彼が、「ん……」とゆっくりまぶたを持ち上げて寝ぼけ眼でわたしを見つめること3秒。



「……、え、と?

ああ、そっか……ごめん、俺寝起き悪いんだよ」



申し訳なさそうにおはようを告げる彼に、同じ言葉を返して朝ごはんができていることを伝える。

彼はきょとんとして、「え、まじで?」と起き上がりながらわたしを見上げた。



「もう作ったの?」



「うん。椿よく寝てたから起こさない方がいいかと思って。

冷めちゃうから、着替えて顔洗ったら来てね」



「ん……ごめん、ありがと」



ぽんぽんと髪をなでてくれる椿。

寝室を出て食卓で彼を待っていれば、10分もせずにわたしの向かい合う席に座った彼は。「美味そう」っていつも通りに微笑むから、何となくむかついた。




「寝起きなのになんでそんなに綺麗な顔なの」



「……いや、はなびも綺麗だけど」



「わたしは起きてからもう結構経ってるし動いてるからよ。

朝目が覚めた時、大抵浮腫んでるんだもの」



ノアと一緒に住んでたときは、一緒に住んでるんだからって潔く諦めてたけど。

さすがに椿にそれを見られるのは恥ずかしい。



「……、それ見れるのって俺の特権?」



真顔で聞いてくる椿に。

「まあ、そうね」と小さく呟けば。次から早起きしようなんてふざけたことを言い出すから、痛くない程度に足を蹴っておいた。



付き合っても、根本的な仲の良さはそのまま。

美味いよって言ってくれた彼と朝ごはんを済ませ、使ったお皿の洗い物をふたりで終えてから、リビングのソファに沈んだところで。