「昼間は我慢したけど、」



キスしていい?と聞かれて、拒まなかったのはわたしだ。

けれど優しい椿は、それでも我慢してくれた。……彼の修学旅行終わり、自暴自棄に椿に迫ったあの時だってそうだった。



「はなび。……もっとしたい」



「っ……」



燻る体温が熱い。どちらのものか分からなくなるくらい、夜が深まってく砂浜で、溶け合うみたいに。

今までの気持ちをぶつけるように何度も何度も優しくキスされて、求めるように深められて、こぼれる吐息が波音に掻き消される。



「……そんな顔しないで、はなび」



しばらくそうしてたら、くちびるを離した椿が困ったような顔で笑う。

少し乱れた息を整えながら、思わず椿を見上げた。……そんな顔って、どんな顔?




「そんなとろけた顔されたら、止まんなくなる」



「なっ、」



「そろそろ帰ろう。遅くなっちゃうし」



繋がれた手を引かれるままに歩く。

椿はそんな顔するなって言うけど、椿だってそんな顔で言わないでほしい。今までだって優しかったのに、そんな底抜けに甘い表情をされたら、やめないで欲しいと思ってしまうから。



「あー、タオル持ってこれば良かったな。

水道あるけどさすがに濡れたまんまじゃ帰れねえし、ごめんはなび。そこまで気回らなかった」



「ううん、平気。ありがとう」



砂浜から上がってサンダルを脱いだら、目の前で屈む椿。

そのままわたしの脚についた砂を払ってくれるから、途端に恥ずかしくなって顔がかっと熱くなる。