見事に見抜かれて。
仕方なく「そうですよ」と綺麗に整った髪に指を通していたら、「ん?」と彼は首を傾げた。
「あれ……そっちなんだ」
「……もうお前余計なこと言わないほうが良いと思うよ」
「……ひどくない?
俺いつも店の売り上げに貢献してるのに」
「じゃあほかの大事なお客さんに迷惑かけるのやめて」
はあ、とため息をついた彼は、その疲れた声とは裏腹に営業スマイルで俺らの前にオムライスを置いてくれた。
そしてオムライスを見たはなびの表情がほころぶ。
……なんだかんだ、はなびは素直だから。
海を見た時もそうだけど、嬉しい時とか楽しい時は大抵顔に出る。でもネガティブな感情は、表に出さないな。
「美味しそう。いただきます」
はなびがスプーンで、一口掬って食べる。
すぐに、言われなくても美味しいってわかる反応を見せたはなびに笑ってから、俺もいただきますとオムライスを口へと運んだ。
「美味しいわよね?
……わたしもオムライス作ることあるけど、絶対こんなふわとろにならないもの」
……そういえば。
はなびはバレンタインのチョコとか誕生日にお菓子とかくれたけど。料理を作ってもらったことはない。どうせあの人は食べてんだろうけど。
「俺にも振舞ってよ、手料理」
「え、やだ。椿は料理に厳しい」
「なにそれ誰情報?」