「はなび何がいい?」



「わたしデミグラスのオムライスがいい」



「ん。じゃあそれふたつで」



田舎、と言っても、おしゃれなお店はある。

海から上がってお昼食べようかと海岸沿いを歩いていたら、真っ白な外観と大きな窓のある可愛らしいカフェが1軒。



店の中から綺麗な海が見えるから、はなびはずっと窓の外を眺めていて。

そんな彼女を特に会話もなく眺めていたら、奥のカウンター席に座る若い男性に「カップル?」と話しかけられた。



「ふふ……、カップルでは、ないんですけど」



窓の外からその人へと視線を向けるはなび。

どうやらこの男性は常連客らしい。いい感じに日焼けした人だなと思っていれば、この先をもう少し行った海岸は、遊泳しても良い海水浴場らしく。




「向こうの方にも店はあるんだけどね。

あっちだと人多いから今の季節は落ち着かないし、ここでいつも昼済ませてからサーフィンしに行くんだよ」



……ああ、似合うな。

サーフィンできますって言われても、何の違和感もない。むしろ「ああやっぱり」ぐらいの調子だ。はなびも思ったことは同じだったらしい。



「素敵ですね、サーフィン。

やってみたいとは思わないですけど……見てるのはかっこいいなって」



「はは、彼氏くんいいの?

一緒にいるのにほかの男のこと「かっこいい」って褒めてるけど」



「……さっき付き合ってないって否定したんですけどね」



言いながら、手を伸ばして。

はなびの髪に触れれば、潮風をはらんだせいか綺麗な髪は絡んでしまっていた。それをそっと指で梳いて直してやっていたら。



「……これは片想いだなー」