今俺がはなびの彼氏だったら、絶対写真撮ってる。

はなびの満面の笑みをデータに山ほど残してる。……さすがにそれは、やらねえけど。



「はなびこっち向いて」



「写真撮られるの恥ずかしいのに……」



数枚なら許されるだろ、ってことで。

スマホを取り出して写真を撮れば、恥ずかしいって言う割には笑顔の写真ばっかりだ。



「恥ずかしいからほかの人に見せないでね」



「元から見せる気ねえから大丈夫だよ」



極彩色の髪が、風になびく。

それにそっと触れようとした手は、はなびの手に遮られて。ぎゅっと握られたかと思えば、「デートなんでしょ?」って笑うから。




「……、はなび」



せっかくただのデートで済ませようとしてるのに、歯止めが利かなくなる。

繋いだ手を引き寄せて、至近距離で見つめて。「キスしていい?」って言葉に、視線をそらすはなび。



「椿、わたしの足元濡れてるから、」



「いいよ、そんなの」



見下ろした瞳がゆらゆらと揺れて、熱で溶けそう。

「いやだ」ってたった一言言えばいいのに。……実際、はなびの家で押し倒した時は、ちゃんと俺のことを拒んだのに。



「……はなびじゃなかったら。

こんな中途半端に惑わしてくる女、絶対嫌いになってんだけど」



焦れったさと触れたさと。

混ざった感情を吐き捨てるように言って詰めた距離に、はなびが目を閉じた。