「別に、いいんじゃない。

どうせいつかは大人になるにつれてみんなそうなっていく訳だし。椿が人よりも早かっただけで」



達観したような物言い。

俺が言うのもなんだけど、それ中学生のセリフじゃなくねえ?



「相手、先輩でしょ?」



「ちょ、なんで知ってんの」



「知ってるわよ。

……その先輩が直接わたしのところに自慢しに来たから」



自慢しに来た……?

なんだそれと顔を顰める。なんで先輩がはなびに自慢する必要が……って、ああ、そうか。俺らが囲ってるお姫様、だからか。



俺が最初に選んだ相手はその大事なお姫様じゃなくて、先輩だったから。

俺の気持ちを知ってか知らずか、自慢したらしい。




「……はなびは大事にしろよ」



「え?」



「だから、俺みたいに簡単に捨てんなってこと。

……女の子にとっては大事だろ、いちばんって」



よしよしと、頭を撫でる。

そうすればはなびは「うん」と頷いて、ちょっぴりうれしそうに笑う。それが可愛くて抱きしめたくなったけど、堪えて微笑み返した。



「椿」



「ん?」



「……ううん。なんでもない」