ノアさんと、彼女と、あの子と。
そこにある関係とはなびの関係だって、もちろん気にならないわけじゃない。だけど、はなびが幸せになれるなら、それでよかった。
「……お前の気持ちはどうすんだよ」
ずっと口を噤んでいた芹が、苦々しくつぶやく。
俺が決めたんだから、そんな表情しなくていいってのに。俺より苦しげな顔してどうすんだよ。
「……何も変わんねえよ」
「、」
「もしはなびがここに戻ってきてなかったら、何年たっても『花舞ゆ』にお姫様は不在のままで。
俺が一方的にはなびを好きだっただけ。……はなびが戻ってくる前と、何も変わんねえだろ?」
苦しむのは俺だけでいい。
好きだけど。どうしようもなく好きだけど。──それ以上に、しあわせになってほしかった。
「……つーちゃん」
「……ん?」
「はなちゃんの誕生日プレゼント……
ぼく、いいもの見つけちゃった」
吹き抜けの先を、ゆびさす穂。
その視線の先を追うようにして、俺もそちらを見てみれば。穂の言いたいことに気づいて、口角を上げた。
「どう思う? つーちゃん」
「いいじゃねえの。
……誕生日プレゼント、決まりだな」
最初で最後の大きな賭け。
最後の最後で足掻くようなみっともない真似はしない。──そのためにも、いま足掻くだけだ。