極彩色に隠れた部分へと鮮やかに残された口づけの痕。

はなびの肌が白いせいで余計に艶かしく染まったそれは、彼女の色気を自重させるとともに、叶わないことを分かっている上での俺の恋情をも増幅させた。



「ああ、その顔は"見た"って顔だね」



「……何が言いたいんですか」



「一応はなびは隠して行ったはずなのにどうして見ることになったのかは、椿の名誉を思って聞かないでおいてあげるよ。

……そうだな。とても端的に言うと、」



何も言わずに、そばで彼の表情を見上げているはなび。

そのはなびの頭を、指輪をしていない方の手で優しく撫でた彼は。



「今後一切、そういうのやめてくんない?」



するりと彼女の指を、絡め取って。

表情とは裏腹に冷え切った声で、そう言った。




「………」



「まあ、はなびを傷つけておいて、

そんな風に迫る余裕なんか椿にはないだろうけど」



文句を言う資格はない。

俺の早とちりだったにせよ、もうあの時みたいな怒りは彼女には湧かないにせよ、一度言った言葉をたやすく取り消すことはできなかった。──だけど。



「……お願いが、あるんですけど」



後悔するくらいなら、言ってしまったほうがいい。

どうせ引き裂かれるのなら、もういっそ。



「はなびの誕生日を、俺にくれませんか」



これ以上ないくらい、深く。深く。

──深く、傷つけてくれて構わないから。