「……頼めば、渡してくれるらしいぞ」



「……会わせる気ねえんじゃん」



「でも、渡せねえよりマシだろ?

さすがにあの人も、人のプレゼント勝手に開けるようなことはしないだろうしな。中にはなびへの手紙を直接入れておけば……読むんじゃないか?」



「読まずに捨てるかもしれないって一瞬思っただろ今。

変な間あったじゃん。……まあいいけど」



どうせ何もできねえんだから。

それなら手紙でもなんでもやってやるよ、と。ようやくソファから身を起こせば、芹にぽんと肩を叩かれた。



「……、」



なに?と聞こうとしたけど。

それ以上何も言わずに「ほら行くぞ」と言った芹が、いち早く階段を下りていく。




「あれ?

みなさん揃ってどこか行くんですか?」



「はなちゃんの誕生日プレゼント買ってくるよー。

ノアさんが渡してくれるみたいだからねー」



「えっ、ずるくないですか!?

なら俺らも近いうちに買いに行くんで一緒に渡してもらいます……!」



……そう、だよな。

結局はなびがここを去っても、当たり前のようにあいつの話が出て、誕生日が祝われて。本当に、お姫様みたいに扱われてるのに。



俺が、あんなこと言ったから。

……はなびの居場所を、奪ってしまった。



「なんて顔してんの。行くよ」



俺の顔を覗き込んだ珠紀が、ため息まじりにそう言う。

左手に嵌めているブラックゴールドのリングは、一昨日までなかったもの。昨日デートで彼女にピンクゴールドのそれをあげたんだと、さっき穂に尋問されて打ち明けていた。