「椿」



「………」



「おい、椿。聞いてんのかよ」



「………」



「ああもうお前、いい加減にしろよ……!

自分から突き放しといて今更ウジウジしてんじゃねーぞ!」



静かなたまり場の中に、うるさい芹の声が響く。

みみざわり。ポケットの中にあったイヤホンをスマホにつないで、適当に音楽を流して音量大。



いまさら何も言わないのも、芹が正論だってわかってるから。

文句を言ったって、みんなが俺よりも芹の味方をすることはわかってる。




「椿!」



ひときわデカい声で呼ばれた気がしたけど、それが俺のイヤホンを外した芹がさっきと違って俺の至近距離で名前を呼んだからだってことに気づいて。

「うるさ」と至極迷惑そうに告げた俺を睨んだ芹は、「いい加減にしろよ」とさっきと同じ言葉を吐く。



イライラする。

芹でもあいつでもなくて、自分に。



「お前が自分でああ言ったから、

あいつだって今度こそ引いたんだろーが」



「……知ってる」



「ヘコむんだったら、あいつに自分で頭下げて連れ戻してこい!

お前の気持ちはそんな程度かよ!?」



「……、お前うるさい」