千秋さんがのいちゃんに、わたしが一緒に住むことを伝えたら、のいちゃんはとても喜んでくれて。

ノアが仕事に行ってしまったから、間宮家には3人だけになる。



事情が伝わったようで、『花舞ゆ』のみんなからたくさん連絡が来ていたけれど。

椿からはやっぱり何の連絡もなくて、どれも見ないまま放置した。



「はなびちゃーん。

いまからご飯の用意するから、先にのいちゃんと一緒にお風呂はいってきてもらってもいい?」



「え、わたしお手伝いしますよ……?」



「これも立派なお手伝い。

ほら、のいもそっちの方が嬉しいだろうから、ね?あ、洗濯物はカゴに入れておいてくれればいいから」



「……、わかりました。

のいちゃん、一緒にお風呂入ろう?」



自分であの場所を去ると決めたのは2度目。

ウジウジしているわけにはいかないし、この環境にも早く慣れたい。わたし以外の3人は家族だけれど、何の繋がりも持たないわたしを受け入れると言ってくれたんだから。




「はなちゃん、いっしょにねよ?」



すでに適応してくれている彼女の頭を、そっと撫でて。

ノアはまだ帰ってこないみたいだから、甘えてくれるのいちゃんと、一緒に寝ることにした。



「おやすみなさい。……ゆっくり休んでね」



「はい。おやすみなさい」



壁の向こうから、ほんのわずかに聞こえる物音は、仕事で忙しい彼女が毎日夜遅くまで家事をこなしている証拠で。

ここに来たからには、それを少しでも軽減してあげられるようになれば、いいと思う。



案外、大丈夫だ。

この場所にいれば、わたしにだってできることはあるし。



ノアの左手には、ずっと指輪があるだろうけど。

ひとりの部屋で誰かを想って泣くことに比べれば。──そんなもの、よっぽどマシだった。