「……はなびは、」



「……うん」



「不器用だね」



……前にも何度か言われたことのあるそれ。

決して不器用、と言われるほど器用さに困った経験はないのだけれど、こうして感情を溜め込みすぎて泣いてしまうことは少なくない。



「わがまま言っていいんだよ。

……って。わがまま言えない環境をつくったのは俺なんだろうけど」



ちゅ、と、また彼のくちびるが触れて。

腕を伸ばして続きをねだったら、いつの間にかソファへと深く沈んでいたのはわたし。



ワンピースの裾がわずかにめくれて、きわどいことになってる。

彼に以前プレゼントでもらったネックレスが、肌の上で揺れる。




「千秋さん、帰って、くるから……」



「……そうだね。帰ってくるだろうね」



「だから、だめ……」



触れたいし触れて欲しいけど、理性が勝つ。

逃しきれない気持ちをキスで塞いで、何度も求めて、千秋さんが帰ってくると同時に何事もなかったかのように離れた。



「それじゃあ、気をつけてね。いってらっしゃい」



お昼を終えて一息ついてから、千秋さんに見送られてマンションに向かう。

キャリーケースに服と必要なものを詰めて。特に必要ではないけれどそばに置いておきたいものをバッグに詰めて、車に乗せた。



徒歩でいつでも取りに来れる距離だから、荷物は少なめで。

夕方、合コンを断ってまで荷物を持ってきてくれた桃にお礼を言って別れてから、千秋さんと一緒にのいちゃんのお迎えに行った。