ああもう、イライラする……!

やっぱり昨日会うんじゃなかったと舌打ちしたくなる気持ちをおさえて、見えてきた駅へと急ぐ。



「もういい!」と一方的に電話を切って、改札の前でわたしの分の切符を買って待ってくれていた彼に、駆け寄ってお礼を言った。

改札を抜けて、ちょうどホームへと入ってきた電車に乗り込む。



「俺が呼び出しといてなんだが、

お前のことで相当荒れてるらしい」



「………」



「お前、あの組織のことこの間も珠紀に聞いてただろ。

……なんか知ってるなら言え。ほかのヤツに言うかは、俺が判断する」



そう言われて。

思い出すのは先日たまり場に行った時芹に教えてもらった、『BLACK ROOM』の話。



通称、パンドラの箱。

あの場所には御陵組という極道の息がかかっているらしい。そしてわたしの中では、とあることが結びついていた。




「わたし、あの場所のことを調べてたのよ」



「……また厄介なことを」



「藪雨 紫が、あの場所の人間ってことは確かで。

わたしその男に、こっち側に来ないかって声をかけられてたの。……もちろん拒んだけれど」



それだけなら何も調べなかっただろうけど、相手は椿と仲が良い。

彼に何かあってからでは遅いと水面下で動いていたわたしは、昨日、ノアに連れて行ってもらったカフェ『Romeo』におとずれた。



あのマスターは。

ヤクザだって、ノアが言ってたから。



「……ビンゴ、だったの。

そのマスターは御陵組の関係者で、やっぱりあの組織のことを知ってた。『BLACK ROOM』で姉さんって呼ばれてる人がいるんだけど、」



「あの場所で、トップに立つ女、だろ」