「……来年受験生だなと思って」



「ああ、ね」



「シイはもう決めてんの?進路」



そういえばこいつ、ホストやってるけど。

そっち1本で就職すんのかと思えば、予想外にも「大学入るよ」と真面目な答え。しかもある程度学部なんかも決まっているようで。



「……ちゃんと決めてんだねえ」



「まあね。

いずれは姉さんのもとで働かせてもらう予定だから、今は学生してるだけだよ。……それでさ」



今日も暑いっていうのに、シイはカッターシャツの袖で指先までを隠してる。

俺なんか制服の袖折ってても、暑いのに。




「椿に謝らなきゃいけないことがあるんだけど」



「……? 謝らないといけないこと?」



「うん。……ノアさんの彼女。

『花舞ゆ』のお姫様らしいけどさ、」



「………」



「ウチの姉さんが、ずいぶんと気に入っちゃって」



じりじりと、焦燥感。

何かが変わってしまうような、そんな予感。──どうか外れてくれと、願うけれど。



「正式に、『BLACK ROOM』に

引き抜きすることになったから、ごめんね?」