「おにーちゃん、あさだよー」



「んー……」



「おきてー」



ゆさゆさ、身体を揺らされる。……かと思えば重みが乗っかって、すみれが上に乗ってきたのはすぐにわかった。

腕を伸ばして頭を撫でてから「おやすみ」と目を閉じようとしたら、「やだぁ」と甘えたな声。



「お兄ちゃんまだ眠い」



「ままにおこられるよ?」



仕方なく重いまぶたを持ち上げて、すみれを見上げる。

何をするでもなくすみれを見つめていたら、よじ登ってきたすみれがよしよしと頭を撫でてくれた。……なんかすみれに子ども扱いされてんだけど。




「わかった、起きるよ」



すみれに腕を回して支えながら、身体を起こす。

ふあっとあくびしてから落ちてきた髪を掻き上げ、「着替えるから先に下行ってな」とすみれを床におろした。



彼女が部屋を出て行ってから、もう一度あくびをこぼしてクローゼットを開ける。

そのタイミングで、ふと何気なく耳にした「来年」の話を思い出して、顔を顰めた。



俺ら5人、はなびも入れて6人。

全員同じ中学出身だけど、高校はバラバラ。俺のとこも、すでに文理選択やら来年取る授業やら、そういう進路の書類を目にする機会も多くなって。



「……進路、ねえ」



「……朝からなに難しい顔してんの」



まだ何も決めてねえな、と。

考え込んでいれば、俺よりも遅く登校してきたシイが、俺の顔を覗き込んでそう言った。