「……本命はどうしたんだよ」



『ノア……?

今週は週末だけ来るみたいよ。……ああ、そうだ。テストもあるし、しばらくたまり場行けそうにないんだけど、』



「いいんじゃねえ?

べつに無理強いしてないから、好きな時で」



そこまで、告げたところで。

ふと電話越しに車の音が聞こえたかと思うと、薄ら人の声も聞こえてくることに気づく。……まさか。



「お前外にいんの?」



『え? うん。ああでも、大丈夫よ。

すぐそこまで送ってもらったから、もうマンション着いたし』



いやいや、全然大丈夫じゃねえしそれ。

っていうか、"送ってもらった"って誰に。男?




「もう22時過ぎてんだけど。

女子高生が歩いてていい時間じゃねえだろ?」



『気にしすぎ。最近治安いいから大丈夫よ』



「治安良いとか悪いとか、男には関係ねえんだよ」



危ないだろってため息をつけば、すこししてがちゃりと鍵を開ける音が聞こえてくる。

ひとまず無事に家に着いたみたいだから、今日は良いけど。こんなに無用心だと、心配が尽きないな。



『あ、電話付き合ってくれてありがとう。

お風呂入るから切るわね』



「……はいはい」



……ほんとに男のこと分かってねえし。好きな女にお風呂入ってくるとか言われたら、こっちはいろいろ悶々とするわけで。

でも鈍感なはなびのことだし、考えるだけ無駄かと邪念を追い払って、かわいい妹の眠るベッドに入った。