「ちっげーよ珠紀、こいつ「好き」って言うのには抵抗なかったんだよ。

俺らに聞かれてる中で、フラれんのがキツかっただけだって」



「ああ、そういう、ね」



「フラれてねえんだから不吉なこと言うのやめろ……!」



片付けしてたくせに、めざとく寄ってきて珠紀の肩に腕を乗せる芹。

いつもなら「重い」とか文句を言う珠紀も、ご機嫌だから嫌がってないし。本当にやめてほしい。俺が羞恥で死ぬわ。



「っていうか珠紀、

はなびの耳元で何言ってたんだよ」



「やっぱりあれ見てたんだ?

彼女持ちの俺にまで嫉妬するなんて、椿も相当だよね」



「もう好きに言ってろ」




……わかってる。

珠紀は彼女のこと大事にしてるし、間違いなくはなびと何か起こるわけはない。俺らの中でも、いちばん可能性がなさそうなふたりだ。



だけど。……だけど、もう。

その関係性でも嫉妬してしまうぐらいには、はなびのことしか見えてなくて。



「……はなびのこと前以上に好きで、やばい」



屈み込んだままぽつりとつぶやけば、俺にターゲットを変えた芹が背中に乗りかかってくる。

重いし立てない。芹が俺のこと大好きなのは知ってるけど、こういうのはちょっと困る。



昔から、「芹くんと椿くんって……」と勘違いされることあるし。

こういう時って、女子同士の「あいつのこと好きなの?」と同じで、否定しても照れ隠しだと取られるのが面倒だ。俺らは断じてそういう関係じゃない。



「芹、重い。なに?」



ちらりと振り返れば、金の髪から鮮やかな二色が覗く。

体重を預けてきた芹は「お前さー」と、意外にも真面目なトーンで口を開いた。