……なるほど。

珠紀に彼女ができるなんて意外、と失礼なことを思っていたけど、そういう成り行きならありえる。



一体どうやってそんな子を見つけたのかは気になるけど、間違いなく犯罪スレスレの返事がかえってくるだろうから聞くのはやめた。

絶対ハッキングとかしてる。ハッキングで同業者調べて割り出したとか、そういうのに決まってる。



「ありがと、珠紀」



「どういたしまして。

俺いま機嫌良いんだよね、椿のおかげで」



「……そうなんだ」



「俺、はなびの鈍感なところは嫌いじゃないよ」



それって褒めてるんだろうか。

……いや、絶対褒めてない。素直な魔王様は思ったことをそのまま言ってるだけだ。褒める気なんて微塵もないと思う。




「ま、俺は結構おすすめだと思うけどね」



「……何を?」



「ずっと自分の事だけ、好きでいてくれて。

何回も後悔してるのに、やっぱり自分じゃなきゃ嫌だからって好きでいてくれる相手と付き合うことだよ」



「……そんな人そういないわよ」



そんな人ばかりなら、人々は幸せになっていることだろう。

珠紀は彼女にそれぐらい大事に想われてるのかもしれないけど、そんなに想ってくれる人なんてそういない。



現実は甘くない。

珠紀に「いたら教えてほしいぐらいなんだけど」と言えば、彼はふっと笑みを浮かべて、さっきと同じ言葉を繰り返しただけだった。



「これだから、俺は嫌いじゃないんだよね。

はなびのそういう、鈍感なところ」